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山本 信次(やまもと・しんじ) 会計監査・花園組長

私、温故知新という言葉がとても好きなんです。古きを温ねて、新しいことが発見できる。また新しい気付きが出来るということなんです。そんな訳で、ちょっと今日はかなり古い話で恐縮なんですけども、今からちょうど50年前、甲賀大教会で青年勤めをさせて頂いたんですけども、50年前と言うと、甲賀の初代会長、山田太右衛門先生にお仕えした先生方が、まだ結構存命でした。みんな明治初年の生まれの先生なんですけども、その先生から仕込まれた話をちょっと2、3紹介したいと思います。

青年勤めに入った途端に、ある役員先生から、「山本君、君、お茶の淹れ方知ってるか」とおっしゃったんで、「ポットからいきなり急須にお湯を入れると葉っぱが焼けて苦くなるから、湯呑みにまず湯冷ましをしてから淹れます」と言うたら、「そんなん当たり前やないか。そうと違って、お茶というものは心で淹れんにゃ」って言われたんですが、それが何のことかさっぱり分かりませんでした。

甲賀大教会の昔の事務所は、外の窓が全部透明のガラス張りでした。その正面がちょうどJR草津線の貴生川駅なんですけど、その頃は車で参拝される方が少なく、当時の国鉄草津線の電車を利用して参拝される方が多かったので、事務所の透明ガラスは、誰が来たかと見えるようにしてあったです。 

来る人を見て、「あの会長、今参拝してるな。山本、一杯付き合え」って言われるんです。一杯って昼間やからお茶やと思うとお酒なんです。「あの会長、酒が好きやさかいな」と言うて千鳥(酒器)にお酒をドボドボーって入れて、参拝して来られたら、「おちゃけです」というて、色をよく見たら透明で、「おおっー」というてニコニコして飲まれる。お酒を飲まれるとやっぱり尻が長くなる。そうしたら役員先生と、あんたのところのあの人元気かとか、あんたのところの婆さんは苦労されて教会作られたさかい、お前親孝行せなあかんぞとか、そういう話をされるんです。

お茶の淹れ方に戻りますけど、「電車で帰ってきたらみんな喉が渇いてるから、最初お茶をお出しする時は、温めで薄いお茶を出せ」ということです。そうしたら、喉が渇いてるから温いお茶やったら一気に飲まれます。「その次は飲み終わった頃を見計らって、『おかわりどうですか?』って言うたら相手は大教会のことやから遠慮されるやろう。それよりも、『おかわりどうぞ』と言うて、お盆をそれぞれの前に出すんや。そうしたら思わず、『そうですか』と言うて湯呑みをお盆に置かれるやろ。そうしたら今度はちょっとゆっくりと落ち着かれてるから、葉っぱをもう一回足して、濃いお茶で熱めのお茶を出すんや。そういう心でお茶を淹れるんや」と教えて頂きました。

もう一点はその初代会長に仕えた会長さん、遠井つるぞう(鶴蔵?)という先生がうちの上級教会に巡教に来られた時に、私は青年として先生の鞄持ちで行かせてもらった時の話です。神殿を参拝されまして、「客間はこちらです」と客間に案内しようと思ったら、「おい山本、台所どこやー」って言われたんです。「台所は奥にあるんですよ。」って言うたら、「台所に案内せえ」と言われました。普通やったら参拝したら客間に行かれるのに、「台所に案内せえ」と言われるので、台所に行ったら、昔は農家や教会は木で作った米びつがあったので、「米びつはどこや」と探されたら、「米びつ、ここですわ」と言うたら、遠井先生は蓋を開けられたんですが、ちょうどその時に限ってお米がありませんでした。そうしたら先生は上機嫌で、「よしよし、なかなか苦労してんな」言うて、蓋を閉められました。その時どんな話をされたかは何も覚えてないんですけども、参拝して台所までつかつか入ってきて、米びつ開けて「なかなか苦労してんな」と言われ、その時は遠井先生はものすごく上機嫌やったんですけども、1時間も話すよりも、そういう行いで見せるというか、大教会の部内巡教というのはこういうのがほんまの巡教やなと、話の内容よりもその先生の行いが、ものすごく頭に今焼き付いています。

甲賀初代の「アホウになれ」というそのアホの信仰に徹せられたから、そういう巡教をされたと思います。今、定例巡業で、参拝して台所入ってきて、米びつ開けるなんて、そんな先生はおられないですけども、初代会長はそういう仕込みをされたと思います。ですから、いつもその傍に仕えた先生から聞いた話で、「お前ちょっとぐらいはアホウなれたか」尋ねられて、「正直な人はなかなかアホウなれないですよ」って言ったら、「何、お前長年信仰してて、まだアホウなれへんのか、そこに座れ」と座り直して延々と説教されたそうです。ところが要領のよい先生は、「おかげさんでちょっとアホウなれました」って言ったら、「そうか、お前アホウなれたんか。それは良かった。良かった」言うて上機嫌やったそうです。初代会長は、騙そうと思えば簡単に騙すことが出来たみたいですが、正直な先生は何時間も説教を食らったっていう、私が青年をしていた時は、初代会長に仕えた先生の話を聞かせてもらったので、ちょっと紹介させてもらいました。

古い話で申し訳なんですけれども、古い企業を温ねて新しい発見が出来るのが、とても大切なことと思わせて頂いております。


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